概説

戦略思考本の古典にして大前研一の代表作企業参謀。本著はその英訳版を日本向けに編集・再翻訳しなおし、逆輸入したもの。企業参謀は氏による難解な言葉遣いや当時の日本の企業文化を前提にした事例も多く、なんだかとっつきにくい印象があったのだが、こちらは欧米に輸出されたものを再編集した輸入版なので、極力国外の人にもわかるような普遍的な例や考え方が記されている。

ピータードラッカーを激怒させた名著:[新装版] 企業参謀 戦略的思考とは何か | 虹彩の銀河

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経営学の権威である大前研一の処女作にして、経営学の古典的名著”企業参謀”。執筆の時代背景として、オイルショックが発生した不況時に描かれた本であり、独特の緊張感、切迫感が漂ってくる。現在では世界を代表する日本企業の数々がオイルショックに苦しみ、その過酷な経済的氷河期の中でも、決してあきらめることなく、世界的強豪に追いつこ

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感想

久しぶりに再読した。もともとこの本を始めに見たのは大学1年の時だったと思う。当時孫子を中心に中国古典、コトラーのマーケティング本やポーターの企業戦略論など幅広く読み漁っていたが、この原本である企業参謀を見たときは衝撃を受けた。考え方のフレーム、金言だけではなく、思考する上でのプロセスの説明が丁寧に行われており、特定の分野に限らない普遍的な戦略思考法が切れ味の良い言葉によって煌びやかに表現されていた。
本質的問題点の抽出方法、KFS、戦略的自由度、イシュ―ツリー、3Cなどなど、根本的な考え方を学ぶ良いきっかけになった。今でも一番記憶に残っているのが
「立派な事業戦略は、厳密な分析よりも、特定の意識、心象から生まれるものだ」という金言。
これは確かに最もな話で歴史上の名だたる軍師、将軍たち、竹中半兵衛や黒田官兵衛、張良や諸葛孔明、信長も義経も皆、編んだ戦略の根本には特定の想いが、熱さをともなった血のようにして流れている。ある人間は劇的な戦略を編み出すことで世に名を残したかっただろうし、あるものは己の志を成し遂げるために飛躍した戦略を立案した。
戦略が事務的な行為に堕した時、事業戦略というアートから最も遠い犬も食わぬ駄作となってしまう。氏が32歳の時に書き綴った本だ。断定的な口調、挑戦的な口調がその若さと自信を裏付けているのだろうが、当時のオイルショックを背景にした緊迫感ある社会状況でも決して希望を捨てないという熱い情念も垣間見えるように思える。
中国古典の傑作が孫子であるなら、古典経営書の孫子に近いものはこの本といってもいいのではないかと見るたびに個人的に感じる。

追記

売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則 | 虹彩の銀河

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売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則 概説 マーケティングの古典。平易な文体だが本質を掴んでおり、事業の全体を考える際、自分の視野が部分的になっていないかの確認に使える。要するに鋭利なターゲッティング、ぶっちぎりのポジショニング、圧倒的イメージをつくりあげること。平らでいるな、とがること。断トツで切

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本郷航

代表取締役社長/CEOG2株式会社
G2株式会社代表取締役社長。 司馬遼太郎が描いた偉人達、北方謙三らが描いた熱い英雄たちの物語に影響を受け、高校在学中から起業を志す。 大学在学中からさまざまなビジネスに手を出し、株式投資も並行して行う。その後海外向けの高級ガジェット専門店を立ち上げ、売却。 有田焼ギフト専門店(ジェイトピア)を創立。 あらゆる業界人が焼き物を決してネットで売ることはできないと断定する中、業界を代表するECプラットフォームを構築。新垣結衣、櫻井翔主演のドラマ等のスポンサーも。 ネット社会において、本来ブランド力や技術のあるサービス、物などのブランディング、マーケティングによる価値創出を理念とする。