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錯覚の科学

ヒューリスティックが人間の判断に影響を及ぼす。最近脚光を浴びている行動経済学の中核を成す概念であり、本書の要旨だ。
世界で最も有名な心理実験のなかの1つである、見えないゴリラ実験を発案した著者らが、その錯覚、錯誤がどのような思考回路で発生するのかについて分析している。正直簡単にまとめられるような話が非常に長々しく書かれているため、要点だけ把握しておけばよいと思う。
人の判断を曇らせる6つの錯覚
注意力:私たちは自分が体験したことを鮮明勝正確に記憶できると思っているが、じつは記憶はゆがむことが多い。
人間の認知力には限度があり、想定外の事が起きたり、マルチタスクの最中であったりすると、容易に物事を見落とす。有名な実験が著者によるインビジブル・ゴリラの実験。似た事例もあったので下記に付加。
自信の錯覚(自信ありげな態度を、相手の知識や能力のあらわれとして反射的に受け入れてしまう)
知識の錯覚(自分の知識の限界を自覚せず、見慣れたものについては十分知識をもっていると錯覚する)
原因の錯覚(偶然同時に起きた二つのことに因果関係があると思い込む)
可能性の錯覚(自分の中に眠っている大きな能力を、簡単な方法で解き放つことで出来ると思い込む。)
selective attention test
Joshua Bell and the Washington Post Subway Experiment.flv
空港の手荷物検査での見落とし、えひめ丸事件、コックス事件、ドライバーがバイクを見落とすバイク事故、医療ミス、運転中の通話による高い事故確率、ひよこ鑑定士が双頭の個体を見落とす、サブミナル効果、モーツァルト効果の嘘など、多様な事例があげられる。
上記の日常的錯覚には共通点がある。どの錯覚も、自分の能力や可能性を過大評価させる。脳は自信家で騙されやすい上に、想像している以上にいろいろな要素に無意識な影響を受ける。そしてもう一つ。いずれの錯覚でも、自分が簡単にできることを、うまくできることと混同しやすい。心理学でいう情報を処理する際の容易性を、自分がたくさんの情報を深く、正確に、巧みに処理できるあかしと受けとる。だが、処理の容易さには、錯覚が潜んでいるのだ。
進化の過程で培ってきた即断即決の悪い面が、錯覚に如実にあらわれている。
問題解決のジレンマ―イグノランスマネジメント:無知の力

1年が10年に匹敵する速度で技術革新がいたるところで狼煙をあげ、社会に地殻変動が起こっている。状況は刻一刻と変化し、既存の知識が過去の常識となり、現実離れした厄介なバイアスになることも少なくない。その激動の時代の中で、氏は必要なものは無知による知であると主張する。
※無知による知:かつて知恵者のソクラテスは他者からあなたは何故そこまで頭脳明晰か問われこう答えたという
「私は他者よりいかに知恵者でないかを自覚している」
[新版]ブルー・オーシャン戦略

世界43か国で350万部以上売れた大ヒット戦略本。
砲火が鳴りやまぬ既存の激烈な競争市場であるレッドオーシャンを抜け出し、顧客に新たな価値をもたらすことで新しい市場、プラスサムゲーム的なブルーオーシャンを創造しようというのが要旨。
本書を支える特に重要な概念は2つ。バリューイノベーションとメリハリある価値曲線をともなった戦略キャンパス。
戦略キャンパスを描く→4つのアクション(減らす・増やす・取り除く、付け加える)
個人的には大前研一氏が提唱した戦略的自由度の概念を補完するものだと思っている。※目的を設定し、どのような軸で解決するのかという考え方。
バリュー・イノベーション
バリュー・イノベーションとは、コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める状態を意味する。コストを下げるには、業界で常識とされている競争のための要素をそぎ落とす。買い手にとっての価値を高めるために、業界にとって未知の要素を取り入れる。すると時が経つにつれて、優れた価値に引き寄せられるようにして売り上げが伸びていき、規模の経済性が働くため、いっそうのコスト低減が実現する。
戦略キャンパス
既存の市場空間を構成する要素、競合他社が重視する要素をチャート化し、可視化すること。
描くコツは下記に意識を向けること。
代替産業に学ぶ
業界内のほかの戦略グループから学ぶ
別の書いてグループに目を向ける
補完財や保管サービスを見直す
機能志向と感性志向を切り替える
将来を見渡す
ブルーオーシャン戦略の事例
受験サプリ:予備校に通えなかった受験生を取り込む。
JINS PC:機能性アイウェアという市場を創造。
オフィスグリコ:従来のお菓子市場の境界に入っていない顧客層を取り込む。
クックパッド:素人の料理コミュニティを創造。従来のレシピ本に興味のない層を取り込む。
肌研:性能の効能と低価格の同時追究。パッケージの高級感の排除。男性層へも支持を拡大。
クロスフィールズ:従来の人材育成サービスの価値曲線に、新興国の社会問題解決、現場で解決させる要素を付加。
セブン銀行:対面対応の要素を減らし、24時間営業の利便性を追及。
青山フラワーマーケット:花を定期的に購入する層へ1000円以下の自宅用ミニブーケを中心に展開。
ヒートテック:中高年が使用するというイメージがあった防寒用下着を、機能とシンプルさを打ち出すことで幅広い層へ拡大。
ほぼ日刊イトイ新聞:広告は掲載せず、ファンをターゲットに物販で収益を上げる。
俺のイタリアン:価格を抑え、回転率を上げることで高級イタリアンやフレンチに興味がなかった層を取り込む。
ブラインド・サッカー:障碍者以外の健常者へも普及拡大。
パーク24:適度な料金と適切な場所で駐車場を短期利用したいという潜在需要に応え、市場を切り開く。
スルガ銀行:徹底したリスク評価。返済リスクの高さの高い顧客に積極融資をし、市場の境界を引き直す。
新日本プロレス:ルックス重視のレスラーを登用し、女性や若者へ支持を拡大。
ライフネット生命:ネット生保という新たな市場を切り開く。営業をなくし低下価格の保険料を実現。保険未加入の人々の需要を掘り起こす。
QBハウス:散髪につきものだったシャンプーやマッサージなどを省き、格安価格、時短、立地で新たな価値曲線を実現。
シルク・ドゥ・ソレイユ:リングリング・ブラザーズ&バーナム&ベイリー(The greatest showman)がつくりあげた動物ありきのサーカス内容を見直し、ふう大人や法人に顧客層を拡大。
カセラ・エアインズ:アメリカで斜陽産業だったワイン業界でイエロー・テイルを発売。選びやすさや飲みやすさ、楽しさを付加した商品は新たな顧客層を獲得し、爆発的にヒット。
サウスウエスト航空:短距離航空業界の創造
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