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概説
コロンビア大学ビジネススクールの名物教授シーナ・アイエンガーによる”選択の科学”に関する本。選択には何故大きな力があるのか。選択を行う方法は人によってどう違うのか。出身や生い立ちは選択を行う方法に影響を与えるのか。選択というツールを効果的に使うには。選択肢が無限にある様に思われる時どうすればよいのか。他人に選択を委ねた方がよい場合はあるのか。20年以上の実験と研究で選択の力を解説。
ビジネスも人付き合いも、いや人生そのものが選択の連続であり、人生の収斂にいたるまでに味わう幸福は決定的な選択によってなされる。数々の事例、理論に彩られた科学的な自己啓発書。
選択する力は命に影響を与える
選択の自由度は寿命に影響を与える
野性のアフリカゾウの寿命は56歳。動物園で生まれた象の寿命は17歳。動物園の
自己決定権の高い職業についた高年収の人間は心臓病で死ぬ確立が低い。決定権の低い環境に置かれた職業は心臓病で死亡する確率が高い。
ある老人ホームで2つの入居者集団をつくった。片方は生活リズムに大幅な自由度を持たせた。もう一つの集団は生活習慣の選択権なし。結果校舎は3週間の間で70%の入居者が健康を悪化させた。
制約のパラドックス
宗教の帰依による人生の満足度の調査:原理主義に分類された宗教の信徒は(著者はシーク教。宗教上の理由で父と母は結婚するまでお互いの顔を知らなかった。)、
宗教により大きな希望を求め、逆境により楽観的に向き合い、うつ病にかかっている割合も低かった。ユニテリアンの信徒、無神論者は悲観主義と落ち込み度合いが高めだった。原理主義者も人生の自己決定権が強くあるという認識が背景にある(宗教的規律による選択肢の少なさが、人生の満足度を高めている可能性もある)。
シンデレラの靴のストーリーは個人的努力のたまもの、タージマハル建設に至るまでの王子と王妃の愛情の建設プロセスは真逆。達成すべき幸福の基準を共有しつつ、最適な解を選択する能力が重要。
※ロミオとジュリエットは死が二人をわかつまで、という悲劇的結末を選択した。ヨーロッパの貴族階級は、政略結婚上の相手では飽き足らず、最も狂気をはらみ、情熱的で破滅的な、儚い不倫を選んだ。
感想
ビジネスにおける消費者行動の本だと勘違いして購入した。どちらかというと人生に影響を及ぼす選択に対し、幸福に生きるためにはどのような受け方をすれば良いのかという自己啓発本に近い。本の内容自体は、脳科学、歴史、心理学、政治学、社会学などを横断し、興味深い事例に満ちている。ただ、もう一度再読するかといえば、しないな。
最近トラウマ治療についての古典的名著、体はトラウマを記憶するを読了したが、その治療において最も重要なのが、被害者のトラウマについての主体感覚を取り戻させることとあった。記憶の奥底から叫び狂い、脳の前頭前野のブレーキを突破し、本能の偏桃体を荒立て、精神を破壊するトラウマ。主体的にその体験から生じる感情と向き合うことで、初めて解決の道筋がたつという。この選択の科学のいう主体的な意識による選択と似ているのではないだろうか。選択から回避することで、痛みから逃げ出すことで物事は解決しない。人の力をかり、最終的に己が正面から向き合うことで、道は開ける。
人生に対する個々人のとらえ方は自由だ。人生は運命論が示唆するような、結末に向かう一本線のストーリーと思うこともできれば、自らのビジョンと行動に無限の可能性を信じ、望むべき結果を手にし、やがて死へと収斂していくという掴み方もできる。それらは宙に浮かぶ雲の姿に、人それぞれが違う絵柄や図を感じるように自由である。
人は物事を選択することによって幸福と不幸を見定めながら道を切り開いていく。選択というものは人生そのものであり、人生の過程を決める重要なプロセス。自己決定の意識を持ち、的確な選択が出来るよう意見を聞き入れながら、向かうべき方向へ向かう。大事に思う仲間たちの人生も幸福となれるよう、相手の意思を尊重しつつ、適切な選択が出来るよう協力していければ良いと思った。
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