人類に遺伝的に近種であったヒト科の生物25種はすでに全滅している。食料豊かなアフリカの大地から、天然の穀物庫争奪戦に敗れた人類が、様々な形質を身につけつつ世界の覇者となるまで、いかなる過程があったのか、ホモサピエンスを取り巻いてきた環境を織り交ぜながら綴られた、人類を主役とした一種のビックヒストリー本。
人類の序章
700万年前にチンパンジーの系統から分岐し、人類の系統樹が始まった。最初期のヒトに見られた特徴は、二足直立歩行と犬歯の縮小だった。
二足直立歩行が始まった理由への仮説は多々ある、見晴らしがよくなるから、焼き付けるアフリカの太陽光に当たる身体面積を減らすため、森林から疎林に移住することで食料入手量が減った分、運搬の効率をよくするために両腕を使えるようにしたという食料運搬説(得た食料を分配し社会性を発達させる)などなど。デメリットもあった。敵に見つかりやすい、逃走速度が遅くなる、産道が狭まることで出産が困難になるなどなど。
犬歯の縮小は自然選択によって行われたもの。おそらくは夫婦制度に起因している。通常牙は同種間での闘争や捕食に用いる。多夫多妻制であれば子が誰の子かわからないので、雄と雄の争いや、他の群れを乗っ取った上での子殺しなども発生する。それが縮小しているということは初期人類は一夫多妻制に近い形態をとり、それが一般となった可能性。人類と類縁にあるチンパンジーやボノボには発情期があり、そのために雄同士のメスの奪い合いが苛烈化する。一方人間にはそれがない。一夫一妻制が発達する余地がある。もしくは肉以外の食料を食べる頻度が増えたという理由も考えられる。
性行動:類人猿は群れの仲間の前でも公然と交尾を行い、交尾は雌の妊娠が可能な時に限られる。一方、人間の場合、性行動はきわめてプライベートな営みであり、子供をもうけることだけが目的とは限らない。(隠された排卵と交尾が男性間の異性をめぐる争いを減速させた。また、パートナーとの緊密さを成り立たせ、家族の基礎になった。オスは子に対して自分の子供であるという確信を強めることもできた。)
初期猿人アウストラロピテクスは社会を営み、認知能力を向上。摂取する栄養が向上。脳の成長が加速。250万年前に生じた人類の一種が石器を作り始める。石器の使用が獲得可能な一日のエネルギー量を上昇させ、さらなる脳の増大化を促した。栄養効率の改善は余暇時間を生み出し、知的生産を促進した。180万年前、人類は初めてアフリカを出、世界へと足を踏み出していった。
30万年前に生じ、4万年前に絶滅したネアンデルタール人。現生人類より身長が高く骨太。脳の容量も多い。石器を作り、集団で狩りも行う。4万8千年前にヨーロッパ大陸に進出した人類と遭遇。象徴化行動は人類よりも少なく、具象に基づき世界を認知していた。言語に関わる遺伝子であるFOXP2遺伝子は発現。舌骨も人類と類似。世界の認識の仕方が大きく異なった。基礎代謝はホモ・サピエンスの1.2倍。体も大きく脳も大きい、燃費効率が悪い大型車。
体格に優れるも象徴的行動が少なく、共感性、言語も未発達。優れた武器や戦術の伝達が遅かった可能性。
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