回避性パーソナリティー障害についての概説本。基本的な症状や診断方法、代表的な有名人やその人たちへの向き合い方が手堅くまとまっている。
感想
回避性パーソナリティ障害とは、親密になることへの恐れ、見捨てられることへの不安からひきこもったり、音信不通になったりと著しい距離を置いてしまう病のこと。ベースにあるのは幼少期における親の距離感によるトラウマ。両親による定期的、不規則なネグにより、自尊心が非常に低い状態にある。そのため外界からの刺激に著しい打撃を受けるため、自己防衛のために回避をはかる。
愛着理論でいう不安型と回避型がベースになっている場合が多く、愛されたいという願望と人に近づくことへの恐怖が心の中で併存し、アクセルとブレーキを両方踏む様な矛盾行動を取ってしまう。結果として回避すべき時でない時に人間関係から逃避することで周りの人間が去っていく。本人は自尊心が低い状態にあり、自分には愛される価値がないという前提が心を呪縛しているため、その誤ったバイアスをさらに強めてしまう結果になる。
いまだいえぬトラウマ
長期にわたる精神攻撃への防衛反応が、脳神経を書き換え、自己の性格を変えてしまうまで存続している状態。
通常人間は前頭前野という理性を司る部分を表に出して判断をしているが、この場合常に外界から自分を守るために偏桃体をフル稼働している。回避・逃避・闘争を司さどる脳の原始的な部分だ。著しいストレスの嵐が心中をとりまき、前頭前野が作動しない。結果として長期的に見てとるべき人間関係からですら逃避してしまう。
一方で、愛されたい願望、人から認められたい渇望に似た願望があるため、その矛盾した行動に本人たちは深く悩むことになる。
DSM-5による診断基準
(1)批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業的活動を避ける
(2)好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたがらない
(3)恥をかかされる、または嘲笑されることを恐れるために、親密な関係の中でも遠慮を示す
(4)社会的な状況では、批判される、または拒絶されることに心がとらわれている
(5)不全感のために、新しい対人関係状況で抑制が起こる
(6)自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、または他の人より劣っていると思っている
(7)恥ずかしいことになるかもしれないという理由で、個人的な危険をおかすこと、または何か新しい活動にとりかかることに、異常なほど引っ込み思案である
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