日本は少子高齢化、人口減少社会へと突入した。すでに常識とされている事象ではあるが、今後具体的にどのような変化があり、国家への影響があるのか、それらを”未来の年表”として年次別に記した本。前半は年表、後半は老体として衰退に暮れゆく国家への処方箋を著してある。
寂然とした衰退
かつて人類が直面したことのない事態。少子高齢化。物事は想像以上に深刻だ。限界集落の増加、社会保障費の増大、生産人口の縮小、創造力を担う若者の減少による革新性の低下、総合した国力の衰退。
過去に古代帝国を滅亡させた騎馬民族の襲撃や、旧世界の人間たちが未知の大陸であった新世界へ侵入し、破壊と虐殺の限りを尽くした上で、数々の国家を灰燼に追いやった悪夢のような派手な終わりではない。
むしろ、真綿でのど元をしめるよりも、はるかに重く、そして寂然とした衰退が人口減少の本質だ。
人口を維持するには2.07人の合計特殊出生率が必要だが、現時点ですらそれに遠く及ばない。出生率は下がる一方なのでこの事態に歯止めを加えるすべはない。なすすべがない上に、移民という劇薬を処方することはかなう状況にはまず見えない。
今後、この国の民全体が富むという明るく輝かしい時代が到来することはほぼないだろう。国力は確実に衰退していく。
この国のピークは終わりを迎えた。これからが本当の勝負、戦では最も難しいとされる撤退戦に突入するのだろう。
一方で2050年には世界人口は90億人を突破する。世界は成長し続けていく。
日本人の底力は外に向かって試されることだろう。
人口減少カレンダー
2017年:「65歳~74歳」人口が減り始める(日本人女性の3人に1人がすでに65歳以上。高齢者がより高齢化する時代に。高齢者の割合はすでに4人に1人。)
2018年:18歳人口が大きく減り始める。やがて国立大学も倒産の懸念
(18歳人口が急減し始め、定員割れは当たり前。学生の募集を停止する流れが加速する。すでに40パーセント超の私立大学が定員割れ)
2019年:世帯数が5307万とピークを迎える
2019年:ITを担う人材がピークを迎え、人手不足が顕在化し始める
(社会インフラの老朽化も進む。だが、それらを支える技術者の後継者がいない)
2020年:女性の過半数が50歳以上となり、出産可能な女性数が大きく減り始める
(出産できる女性が激減する日本。少子化はさらなる少子化を呼ぶ。人口が減らない水準は2.07)
2021年:団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始める
(団塊ジュニア世代が50代に突入し、企業は管理職の人材不足に悩む時代が来る)
2022年:団塊世代がすべて75歳以上となり、社会保障費が大きく膨らみ始める
(独居世帯は3分の1超。一人暮らしをする貧しい高齢者の急増が大問題に。世帯数は増えるが独居数も増える。)
2023年:団塊ジュニア世代が50代となり、企業の人件費はピークを迎える
(労働力人口が5年間で約300万人も減る一方、団塊ジュニア世代が高賃金をもらう50代に突入)
2024年:団塊世代がすべて75歳以上となり、社会保障費が大きく膨らみ始める
(3人に1人が65歳以上の超高齢者大国へ。全国民の6人に1人が75歳以上、毎年の死亡者は出生数の2倍。老々介護がのしかかる)
2025年:東京との人口が1398万人とピークを迎える
(息子や娘を頼る高齢者が、若者の代わりに地方から東京に流入し始める。東京でも4人に1人が高齢者に)
2025年:高齢者の5人に1人が認知症患者(約730万人)となる
(認認介護が急増、介護する側もされる側も認知症患者という現実が待ち受ける。社会保障給付費は2025年には約149兆円に拡大する。)
2027年:献血必要量が不足し、手術や治療への影響が懸念されるようになる
(輸血用血液はその80%が、がんなどの外科手術に使われる。手術ができない事態も!?)
2030年:団塊世代の高齢化で、東京郊外にもゴーストタウンが広がる
(生産年齢人口が極端に減り、全国の都道府県の80%が生産力不足に陥る)
2030年:ITを担う人材が最大79万人不足し、社会基盤に混乱が生じる
2033年:空き家が2167万戸を数え、3戸に1戸は人が住まなくなる
(増大する老いる家のせいで街の景観は崩れ、治安も悪化していく)
2033年:老朽化したインフラの維持管理・更新費用が最大5兆5000億円ほどに膨らむ
2035年:男性の3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚という「未婚大国」になる
(男性の3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚)
2039年:死亡者数が167万9000人とピークを迎え、火葬場不足が深刻化する
(国内死亡者数が約168万人とピークを迎え、霊園不足という難題も降りかかる)
2040年:全国の自治体の半数近くが「消滅」の危機に晒される
(青森市・秋田市などの県庁所在地ですら、消える可能性がある)
2040年:団塊ジュニア世代がすべて65歳以上となり、大量退職で後継者不足が深刻化する
2042年:高齢者数が3935万2000人とピークを迎える
(就職氷河期世代が老い、独居高齢者が大量に生まれる)
2045年:東京都民の3人に1人が高齢者となる
(東京圏でも限界集落が続々出現、東京郊外はゴーストタウン化していく。大都市部では総人口はあまり減らず、高齢者の実数だけが増えていく。これに対して、地方では総人口は減少するが、高齢者の実数はさほど増えるわけではない。)
2050年:世界人口が97億3000万人となり、日本も世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
(日本が人口減少する一方、相変わらず世界人口は増え続けて約100億人に)
2050年:現在の居住地域の約20%が「誰も住まない土地」となる
(現在の居住地域の約20%が誰も済まない土地となり、外国人が無人の国土を占拠する)
2050年:団塊ジュニア世代がすべて75歳以上となり、社会保障制度の破たん懸念が強まる
2053年:総人口が9924万人となり、1億人を割り込む
2054年:75歳以上人口が2449万人でピークを迎える
2055年:4人に1人が75歳以上となる
2056年:生産年齢人口が4983万6000人となり、5000万人を割り込む
2059年:5人に1人が80歳以上となる
2065年:総人口が8807万7000人で、2.5人に1人が高齢者となる
2076年:年間出生数が50万人を割り込む
2115年:総人口が5055万5000人まで減る
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