コミンテルン陰謀史観についての本。そしてそれを肯定する内容。
ソビエト連邦成立から冷戦の終戦まで、ロシアの共産主義組織、コミンテルンが各国に間者を送り込み、自分たちのイデオロギー達成のために大規模な政治活動を行った。
第二次世界大戦に関してもソ連の諜報機関が影で糸を引き、日本は彼らの謀略にのせられ太平洋戦争へと突入した。終戦後、冷戦下においても日米中などを筆頭にした先進国へスパイを送り込み、歴史創造の歯車を陰でまわしていた。
そうしたソビエト連邦樹立以降の歴史上の出来事を、コミンテルンを主役として眺めた歴史観。
目的は手段を正当化する
歴史は勝者の都合通りに叙述される。敗者の記録は抹消されるか、改竄されるか。三国志などもそうだろう。魏の書物であるので、敵対した蜀や呉の武将たちの大義や能力を不当に評価している。日本の明治維新に携わった旧幕府軍の人間たちの過小評価も同様。では、大東亜戦争の場合はどうだったのかということ。戦勝国であるアメリカの統治機関GHQが戦後の日本の価値観に対してプロパガンダ活動や、教育、憲法への干渉を行ったのは揺るがない事実ではある。戦勝国側は、日本は世界に対して不当な侵略行為を行い、一切の正当性のない暴挙を国際社会に対して繰り広げた。戦前、戦中の教育や制度、あらゆる価値観は間違っていたと。様々な角度、経路から繰り返し刷り込みを行った。
その一連の評価に対して異論を唱えるのが東京裁判史観である。上記の連合国側による押しつけの価値観ではなく、日本が行った行為を度合いはあるとしても、見直していこうというもの。この本はコミンテルン陰謀史観を肯定し、東京裁判史観についても肯定している。
いくつか興味深かったのが、ナチスドイツは欧米において絶対悪であり、相対悪ではないという考え方。ドイツではナチスを肯定した場合、扇動罪に問われ、人間の自由を謳うフランスでもナチの肯定を国会で行えば罰せられる。その背景には第二次世界大戦の戦勝国によるプロパガンダがあると。そしてソ連の利害関係国に対する大規模な諜報活動を示したヴェノナ文書の発見、毛沢東とスターリンの秘密通信)。
色眼鏡はサングラスだけでいい。
近現代の歴史観は、イデオロギーを持つ人たちが一定数いるのであまり表立って関わりたくないというのが本音だが、事実として各国の諜報組織が歴史の背景で暗躍したいたことは間違いない。また、戦勝者が敗者側を絶対神の如く断罪することは古今東西歴史の常であり、彼らは政治目的の達成のためならいかなる手段も用いる。第一次世界大戦期、第二次世界大戦のプロパガンダ(ねつ造事件含む)や、ベトナム戦争や湾岸戦争での敵を悪役と化すためのでっち上げプロパガンダ、あげればきりがないほど国家主導の国民煽動の方策というものの足跡がのこっている。第二次世界大戦期中、ドイツとソ連の同盟や仲たがいを通じて、共産国が戦いの構造をのなかで揺れ動く。
一体何を信じればいいのかといえば少なくともイデオロギーではない。確固とした事実、それを冷厳に帰納した先にあるもの。それは言うまでもない。
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