国家間の関係を地理的側面から戦略的にとらえる学問が地政学。
21世紀初頭に勃発した9・11を皮切りに、アメリカはアフガニスタン戦争・イラク戦争と次々に対テロ戦争を仕掛け、それに伴い中東世界を中心に世界情勢は急速に悪化。こうした政情不安に巻き込まれるようにして日本を取り巻く国際環境も悪化の一途をたどる。
アメリカは国際秩序を乱すだけ乱した上、混沌の沼と化した国際情勢を目の前に、世界の警察をやめる、アメリカ第一主義(ブロック経済に似たり)を掲げ、匙を投げた。
今後の世界を読み解く観点として地政学の教養があって損はない。
国を擬人化し、それぞれの特性を正確や経歴に織り込んで描写しているところ、外交関係をそれら個性ある人々(国々)らの交友関係に喩えている点がユニークな本。
重要な点
歴史や未来の国家関係を予測する上で重要になる要素。
●その国や地域が置かれている地理的な条件、地政学的なリスクやメリットを考慮すること。
●国の歴史や民族性など、国家の性格を形作るものを把握すること。
-朝鮮半島は大陸の大勢力に囲まれ、彼らの圧力を絶えず受けつづけた。外界から身を守るために現在の国家的性格がある。
-中国の中華思想。漢民族が世界の中心的民族であり、それ以外を蛮族とする考え方。
-不凍港を探し続けるロシア。
-ヨーロッパとアジアを結ぶ要所にある中東。
●ランドパワーとシーパワーに分類して考えること。
ランドパワー:大陸を支配する国家。ロシア、中国、ドイツ
シーパワー:海洋を支配する国家。日本、イギリス、アメリカ
-日本は極東に位置し、外洋に面するシーパワーである。海が大陸からの侵略を守り、独自の文化を育てた。冷戦時は反共の防波堤となる。朝鮮半島はソ連や中国のランドパワーに対する緩衝地帯。
-ランドパワーは自らの領地に引き込む大陸の戦いで負けることが少ない。中国対日本 アメリカ対ベトナム ロシア対フランス 国民党対共産党 ドイツ対ロシア
-中国は伝統的にランドパワー国家。北方民族と絶えず紛争。西は高原、砂漠が守る。近代になるまで外洋からの侵略におびえることなく過ごした。また自らも外洋進出に関心を持たなかった。
-アメリカはシーパワーであり2つの世界大戦中も外敵の圧力が少なく、力を蓄えることができた。(1次世界大戦後の台頭。第二次戦後のマーシャルプランに繋がる。)
-第一次世界大戦期の3B戦略、3C戦略。
●ハートランドとリムランドの観点をおさえること
ハートランド:ユーラシア大陸の心臓部。マッキンダーはここを抑えた国家がやがて沿岸部を征服し、世界の覇権を握ると主張。マハンは対照的にシーパワーの重要性を主張。
リムランド:西はイギリスから東は日本に至るハートランドの周辺。
-第二次世界大戦中、冷戦中アメリカはリムランド国家と同盟を結び、ナチス、ソ連、中国などランドパワー国家を封じ込めた。
-北方領土である国後、択捉は、ロシアにとって外洋に出るための不凍港であり、仮に返還した場合、アメリカ軍艦が駐屯する可能性のあるリスク。
-冷戦時、アメリカの戦略上の大きなテーマはハートランドにある共産勢力をリムランドへ進出させないようにすることだった。
-中東における紛争はアメリカロシアの代理戦争的な立ち位置。
-ロシアはハートランドを支配するランドパワー。北極海は凍結し、シーパワーの国が背後を攻めることができない。
●国家の生命線に着目する
-第二次世界大戦中、日本における満蒙のポジション。ロシア南下の防波堤、経済的要地。
-シーレーン。日本は原油の八割を中東に依存。アラビア海からルソン海峡に至るシーレーンを抑えられると極めて苦しい。
-中国の第一列島線、第二列島線。九段線。一帯一路。シーパワー国家への転換と強固な生存圏の確立。
-世界大戦中アメリカは日本に太平洋の制海権を握られることを恐れた。
-ロシアは欧州へのパイプラインを、ウクライナから手数料をとられないよう迂回する形で配置する計画を進める。
-スエズ運河。
●核保有
核兵器は戦略のルールを変える重要な兵器。着目する必要がある。
地政学
国家の戦略を地理的な観点から分析するのが地政学。ただそれを行うには地理的観点のみならず国家の歴史や性質、戦略指導者の性格など幅広く考慮する必要がある。企業戦略を考えるのも国家間の動向を推測するのもある意味ではそれほど違うものではないように思える。
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