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概説
原作は1巻から4巻。前半は斉藤道三が主人公。後半は道三に薫陶を受けた二人の男、織田信長&明智光秀を主人公に話が進んでいく。
中世から近世へ続く道を示した道三と、その新たな時代への轍をさらに革新・拡大させようとした織田信長。道三の古典的教養を学び、中世の伝統と歴史の保持に義務と誇りすら覚える明智光秀、3人による歴史長編。
主要登場人物
斉藤道三:乱世の巨魁
道三は洛中にあった妙覚寺出身の僧侶であり、還俗して素浪人となる。武芸百般に通じ、兵書経書史書など万巻の書を頭中に蓄えた教養人。さらに舞えば香るような芸事も備えた一種の超人。
その後1人の素浪人から京都最大の油屋の当主となる。そこで得た潤沢な資産を元に、有数の大国である美濃へ仕官。主君土岐頼芸を助け、美濃一国を統一。その後頼芸を追放。国主となる。
その時すでに道三は老いており、隣国の織田信長、正妻である小見の方の甥である明智光秀を我が子のようにかわいがる。そして稀有な生涯で得てきたあらゆる知見を二人へ託し、義理の息子である斎藤義龍との争いの中、戦塵の露と消えた。
織田信長:破壊的創造のアーティスト
世人より幼い頃からうつけ、バカ殿などの陰口をたたかれる。異様な振る舞いが多く、凡人には理解できないような服装を行い、街中を闊歩する。父の死の際に、抹香を投げつけた話が代表的。
ただし、その裏には彼なりの美意識や論理、合理性があり、その能力の可能性は親の織田信秀や義父である斉藤道三に見抜かれていた。斉藤道三を敬愛し、信秀の死後、彼を父のように慕う。道三が戦死する最後の戦にも自らが先頭となって援軍へ赴いた。
尾張を統一。その後秀吉の謀略を中心に美濃を攻略。やがて京に旗を打ち立て、天下に号令をかける。
合理主義者かつ無神論者であり、中世の理不尽なしきたりや社会体制を徹底して破壊する。貴賤なき実力による人材登用。法による厳格な統治。鉄砲の効率的運用。南蛮文化への寛容性。楽市楽座政策。などなど、近世の大道をど真ん中で突き進む政策を貫き通す破壊的革新者。
同じく道三に薫陶を受けた明智光秀により、本能寺で死す。
明智光秀:古典的教養を兼ね備えた天下の名将
土岐家の支流である明智家の出身。道三の正室である小見の方の甥。
幼少より利発であり、幼い頃より道三に自らの子供のようにかわいがられる。道三の軍略や古典的教養を徹底して吸収。道三の革新性こそ受け継がなかったが、教養面で道三の忠実な弟子となる。
道三の死後、各国を放浪。将軍家の知己を得て、幕府再興の情熱を燃やす。やがて当時有力大名であった織田家に、将軍足利義昭のすすめもあり仕官。幕府滅亡後も仕え続けることとなる。
外交政治軍事、あらゆる面で能力を発揮し、羽柴秀吉と並ぶ織田家を担う双肩となる。
武芸百般ならず詩歌にも通じ、万巻の典籍をそらんじる圧倒的学才は天下有数とされた。
その古典的教養、中世的価値観がゆえに、儒学的にものを見るため、信長の革新的な政策、中央集権体制、人の安易な切り捨てなど、彼の行動に対して理解の追いつかなくなることが徐々に増え、精神を病み、最終的に本能寺の変を引き起こす。
三日天下に死す。
感想
斉藤道三。これにつきる。この男の魅力。個人的には彼が主人公として素浪人の身分から国を奪うまでの過程を描いた1~2巻までが面白い。
あとの3~4巻はどの小説であれ、漫画であれ、ある程度似たことが書いてあるだろう。なぜなら、この小説以降の織田信長像や明智光秀像というのはこれらに影響を受けているので、どれを見ようとそこまで変わらない。それだけ世の中の英雄像に影響を与えた重要な本当といういい方もできるだろう。
続く
男としての道三
斉藤道三の前半生は輝いている。素浪人、油商人を経て美濃一国の主になるという。一方で安定した後半生になるにしたがって、しぼんできた感じがある。
拡大期に輝く人間が、守成の段階で成果を上げれるとは限らない。
ただ、信長に全て託して戦死していった、国盗り物語の彼の最後は流石だと思う。
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