利己的な遺伝子

人は何故他者を愛し、協力し、時に奪い合うのか。人間のみならずこの地球上、宇宙上の生きとし生けるものの根本的な意義は”利己的な遺伝子”によるものと定義した画期的な名著。人は遺伝子(自己複製子)の乗り物であり、生命の根源的な主役はそれにある。生命体が殺戮を繰り返し、簒奪の果てにたどりついても、地球全体のどこかで、何かしらのかたちで遺伝子は存続し、環境に適応し、進化していく。人間の利己的な行為、利他的な行為ですら、結果として己が搭載する自己複製子を後世へ受け継ぐためのESSにすぎないと。カッコウの托卵性やゾウアザラシのハーレム制、社会性昆虫の社会内でニートをする群体、男が浮気する理由、人間の女が簡単に男に抱かれない理由、劉邦が項羽から逃亡する際に、馬車の速度を上げるために子を車両から投げ捨てた逸話など、すべてこの理論のレンズを通して眺めれば説明がつく。
神や神秘性が介在した20世紀までの生命観を悉く覆し、唯物的な生命観を極限まで追究。生き物の悲しい性をものの見事に描写してある。科学本でもあり、哲学の本でもあり、宗教の分野にまでその影響力は及ぶ。今後1000年は読み継がれる不滅の大著だろう。

企業参謀ノート[入門編] 超訳・速習・図解

大前研一の経営学本の処女作にして戦略思考の古典、正・企業参謀と続・企業参謀。それらに加えマッキンゼー現代の経営という経営ツールの解説本を足し合わせ、非常に平易かつ簡易に内容をかみ砕いた本。戦略思考本というよりかは、彼が現状の世界に対してどのような考えを持っているかをまとめた、教訓、時事本の側面が強い。読み進める限り企業参謀正・続、マッキンゼー現代の経営に至るまでの長々しい前書きのような内容という言い方もできなくもない。
理論も時事に載せて書かれているので非常にわかりやすくあるのだが、上記原本3冊の内容を相当希釈してあるので、基本を学ぶ上では中身が薄い。ここは素直に原本を見た方が良いと思う。
ただ、大前研一の企業参謀シリーズが難解で理解に苦しむ人がいるのであれば、その解説・入門本としては役立つだろう。そういう意味ではブルーオーシャン戦略を地でいく本と言える。

彼が企業参謀の中で、戦略に携わる者対して書き残した参謀5戒というものがあった。内容は
●参謀たるもの「イフ」という言葉に対する本能的恐れを捨てよ
●参謀たるもの完全主義を捨てよ
●KFSについては徹底的に挑戦せよ
●制約条件に制約されるな
●記憶に頼らず分析を
といったものだ。
この本を考え見るに、上記の参謀役に対して残した5つの原則について、どのような思いや考えを元に書いて描いたのか、今彼がどう考えているのか、熱意ある言葉と共に深い意義を投げかけてくれている。
”自分の頭で考えよ”
”評論家になるな”
”真の答えを見つけよ”
”ツールは使え、依存するな”
”会社の”名札でなく自分の値札で生きろ”
”人と違う生き方を生きろ、他人の足跡をなぞるな”

数々の言葉が、情熱を刺激してくれる。

察しない男 説明しない女

男と女の考え方は火星人と金星人ほどの違いがある。
男は論理を優先し、女は感情を優先する。男は察しない、女は説明しない。女のいうかわいいを信じる男、最大瞬間風速でそれを感じているだけの女。
この本の要旨は、男と女は分かり合える前提で話をするべきでなく、分かり合えないからこそ相手の事を理解する必要があるということ。
ではどういった差異があるのか、それについて簡易に述べた本。例えば何か仕事で解決すべき事態があったとして、男はそれに対し論理的な説明を求める。それに対して女は感情を優先し察してくれることを求めるなど。この本は男と女の考え方の違いについて、エッセイのような叙述が多く、何故そういう差異が生まれるのかという根本的な理由についての記述が少ないので、本当にそうなんだろうかと思ってしまう節は多い。ただし、興味深い点もいくつかあった。

特に重要な要素2つ。
●女性の脳梁は太く、感情を司る右脳と論理を司る連携が良い。一方で多量の情報を処理するため決断が遅い。(テストステロン値も低い。)
●男の脳梁は細く、右脳と左脳の連携は弱め。集中力は高い、決断力がある。
脳の構造やホルモンのバランスが男と女の脳の働きを大きく違うものにしているのは確実。

科学的な説明が薄いので、本当かどうかわからないが、興味深くはあった点。
何にせよ脳の構造やホルモンバランスの違いが脳に性差をもたらしているので、そこを前提に考えればある程度は察しがつくように思われる。
●進化の過程で男は縦社会的脳を持つようになり、女は横社会的脳を持つようになった。
●男は野球のような競争で育ち、女はままごとのような共感で育つ。男には進化の願望があり、女にはシンデレラへの変身願望がある。
●男は女に対して初めての存在になりたい。女は男にたいして最後の存在になりたい。
●男はみんなが好む女が好き。それにたいしてナンバーワンになりたい。女は自分をオンリーワンで愛してくれる男が好き、それに対してオンリーワンになりたい。
●男にとって恋愛はゲーム。女にとっては結婚。
●男はノリノリの時に女を欲しがる。女はどん底の時に男を欲しがる。
●男は記号に欲情する。女は信号に欲情する。
●男は浮気した女を非難する。女は浮気相手の女を非難する。(両性とも自分の価値を守るため)
●男の記憶は別ファイル保存。女は上書き保存。
●男は分析されたくない。女は言い当てられたい。
●男は謝れない。女は忘れない。
●男はほめてほしい。女はわかってほしい。
●男は会話に結論を出すことが目的、女はおしゃべり自体が目的。

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本郷航

代表取締役社長/CEOG2株式会社
G2株式会社代表取締役社長。 司馬遼太郎が描いた偉人達、北方謙三らが描いた熱い英雄たちの物語に影響を受け、高校在学中から起業を志す。 大学在学中からさまざまなビジネスに手を出し、株式投資も並行して行う。その後海外向けの高級ガジェット専門店を立ち上げ、売却。 有田焼ギフト専門店(ジェイトピア)を創立。 あらゆる業界人が焼き物を決してネットで売ることはできないと断定する中、業界を代表するECプラットフォームを構築。新垣結衣、櫻井翔主演のドラマ等のスポンサーも。 ネット社会において、本来ブランド力や技術のあるサービス、物などのブランディング、マーケティングによる価値創出を理念とする。