現代日本人の睡眠時間は先進国で最下位。休日には睡眠負債を解消しようとして、寝だめをする人が多いようだ。だが残念なことに寝だめには効果がない。最も身近にある睡眠に対して人はどれだけの理解をもって臨んでいるのだろうか。
人生の3分の1を占める睡眠時間。睡眠時間は日中の肉体、精神に影響を与え、物事の処理能力、認識能力にも多大な影響を与える。いわば人生を楽しむための鍵である。睡眠の質が低ければ人生における心の感度も低くなり、弾みを失う。逆に高ければ高いほど、高いパフォーマンスを維持することが出来る。
ではそのためにはどのようにすればよいのか。
タイトルのスタンフォード式というのは、1963年に創設された「スタンフォード大学睡眠研究所」が、世界の睡眠医学を牽引している施設であり、著者がその関係者であることと、本書の論拠がそこに由来することが多いことによる。
睡眠の機能
1:脳と体に「休息」を与える
睡眠の役割で、欠かせないのが休息。「睡眠=休息」ではないが、大きな役割がある。「100%オフ」にはならないが、睡眠中の脳と体は「スリープモード」になっている。人間の自律神経は絶え間なく働いているが、睡眠中はリラックスを司る副交感神経優位の状態にすることで寝付きを良くすることが出来る。
2:記憶を整理して定着させる
入眠直後の最も深いノンレム睡眠(睡眠後90分)のときに、買い場から大脳皮質に情報が移動し、記憶が保存される。嫌な記憶も消去される。
3:ホルモンバランスを調整する
細胞の代謝や身体機能を活発化させる成長ホルモンは入眠後90分に最も多く分泌される。生殖や母性行動に関与するプロラクチンも同時期に分泌。皮膚の保水率も睡眠で上がる。
4:免疫力をあげる
睡眠が不適切になると、ホルモンバランスが崩れ、免疫の働きもおかしくなる。癌の確率が上がり、アレルギーが悪化する危険性もある。
5:脳の老廃物をとる
脳せき髄液はおよそ150cc一日4回600ほど入れ替わる。その際新しい脳脊髄液が出て、古いものが排出され、脳の老廃物も一緒に除去される(アルツハイマーの原因物質なども)。日中の覚醒時にも除去は行われているが、それだけでは追いつかない。就寝時のメンテナンスが重要。
黄金の90分にフォーカスする
要点:人間は睡眠中レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返している。入眠から90分の間に訪れる「黄金の90分」を制することで睡眠の質は劇的に向上する。
黄金の90分のメリット
1:自律神経が整う
頭痛、ストレス、疲労感、イライラ、肩こり、冷え性などなんとなく調子が悪いという違和感の根っこにある自律神経の乱れを修正する。
2:成長ホルモンが分泌する
成長ホルモンは細胞の成長や代謝などに影響。入眠90分で70~90%の成長ホルモンが分泌される。睡眠の質により分泌量が影響。起床中はまったく分泌されない。
3:脳のコンディションが良くなる
脳内栄養因子、脳内伝達物質のバランスを整え、コンディションを整える働きがある。
具体的な方法
1:寝る1時間30分ほど前に体温をあげる、風呂、ストレッチなど。
2:寝る前に交感神経を高めない。ブルーライトを浴びない、運動しない。
3:寝る前の行動を習慣化する
本書には覚醒するためのコツも書いてあるが、それは人それぞれだろうし備忘録にいれる必要がないと考える。入眠を制することで快適な目覚めも訪れるだろうから。
人生のパフォーマンスをあげたければ何事も習慣化することということだろう。睡眠も飲酒も飲食も遊びも学習も何もかも習慣づけてしまえば苦にはならない。質の良い睡眠をおくるための鍵は初期入眠90分をどれだけ快適に行えるか。それを果たすにも習慣がいる。習慣は人をつくり、運命を生み出す。
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