東京に生きる26歳のモテない弁理士の男、渡辺。
彼が主人公にあたる。
結婚までいきつけることを期待した彼女、麻衣子に浮気され失意の底へ。
そこへ現れたのが仕事のクライアント先の永沢だった。
とある稀有な事態から彼らは親睦を深め、稀代のモテ男永沢は渡辺に恋愛工学を伝授することになる。
それはすなわち女性からモテる(モテる=ヒットレシオ×試行回数)ことを最大化するためのナンパ理論だった。
空気のように存在感の薄い非モテ男は、4番打者なみの打率を誇る、勇猛果敢な別人へ生まれ変わっていく。
恋愛工学
様々な理論が登場するが、心理学や進化生物学、行動経済学などから来ているものがかなり多い。
要するにそれらを総合して、そうした面での打率をあげようというのがこの本の趣旨である。
実益と虚無の果て
この本を見ていると虚しくなった。
生物の本質は拙く、幼い。
脳の働きは直感で働くシステム1、熟慮で働くシステム2と別れるが、
簡単にいえばシステム1をうまく利用して、人の心を操れということなのだろう。
ただ、虚しい。
人間が動物の一種であることを痛感させられて。
運命の機能
そもそも10億年前に有性生殖という画期的な繁殖方法が地球に爆誕した。雄と雌が生殖することで、それぞれの半数のDNAを交差させ、新たな個体をつくる手法である。
それ以前の生物は分裂するなりして、金太郎あめを量産するように、ほぼ同じDNAを時代に残し、だらだらと膨大な年月を海の底で過ごしていた。
進化はDNAのバグによって生じる。有性生殖以前の生物は次代を作成する際に、個体のDNAをそのままコピーして生み出す。バグも少なく、多様性も生まれにくい。その点有性生殖は大胆にDNAの組み合わせを生み出せる。そのためそれ以降、地球は百花繚乱の如く様々な種が生まれては消えていく、生きとし生けるものたちのダイナミズムあふれる創造の大地へ変貌していくわけだ。
嘘のスキャット
有性生殖をおこなう生物は、オスとメス同士が最適な交配を行えるよう、それぞれが同性、異性に対し己の遺伝子の有意性を示そうとシグナルを発する。孔雀であれば羽の美しさを競うし、カブトムシであれば角の大きさを競う。
人間もまた同様。
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